超音波洗浄装置に関する基礎知識

レンズ超音波洗浄装置などで知られる超音波洗浄装置は、人が聴こえる音の響きよりも高い周波数の波動を浸かって付着した汚れを取り除くことが目的で作られたクリーニング装置です。

超音波洗浄装置は、非接触で汚れを取ることができる湿式のクリーニング装置です。さまざまな形状のものがあり、対象物や効率によって選ぶことが可能です。利用する媒体は水や洗剤などが考えられますが、ただ流すだけの洗浄よりも気泡の破裂の衝撃によって、高い効果が期待できます。メリットをしっかり理解して、素材に合ったものを選びましょう。

超音波洗浄装置の特徴

洗浄装置を使用環境で大きく分けると乾式と湿式の2種類になります。乾式とはエアブロアーやプラズマ、オゾンなどを利用したものです。湿式は液体を利用するタイプで、一般家庭では洗濯機で利用されていります。工業ではシャワーや噴流、浸潰などが該当します。超音波洗浄装置もその中の一つです。

音波というと空気中を伝播して耳に入る音というイメージがありますが、水の中でも伝わっています、ただし一方向に進む空気の中とは違って、周りに拡散してしまって耳に入るまでに減少してしまって聞こえないという問題があります。超音波洗浄装置は、この性質を利用して水の中全体に超音波をまんべんなく行き渡らせることで対象物をきれいにすることが可能です。

水中に流れる超音波は、液体に含まれる気体に影響します。音波は名前の通り波でできているので、高低ができます。この差が気体に収縮と膨張を引き起こし、活発な動きが行われるようになることで気泡にすることが可能です。気泡は対象物に当たると表面にある汚れをこすり取ります。また当たった衝撃で破裂して衝撃を与えます。これがキャビテーションと呼ばれる現象です。

キャビテーションは気泡が弾ける時の衝撃をエネルギーとして、対象物に影響を与えるものです。船などのスクリューでも発生するもので、劣化させる原因と言われて対策すべき問題の一つとなっています。超音波洗浄装置で発生する気泡はとても微小なものなので、対象物自体を破壊するほどの威力はありません。微小な泡が細かな隙間にも入り込んで汚れを取り除く働きが期待できます。繰り返される衝撃で全体の汚れをきれいに落とすことができます。

超音波洗浄機の種類

超音波洗浄装置にはいろいろなものがあります。洗浄する対象物を考えると、カメラなどの光学系に使われるレンズを洗浄するレンズ超音波洗浄装置などもその一つです。構造によって分けることもできます。超音波洗浄装置の基本構造は、発振器と呼ばれる電流を発生させる部分と振動子と呼ばれる電気を振動に変える部分に分かれます。この2つは必ず必要となる構成要素です。眼鏡店の店先に置かれているレンズ超音波洗浄装置はこの2つが一体となった卓上タイプと呼ばれるものです。

製造工程で使われる超音波洗浄装置では、基本的に発振器と振動子が離れていて電線でつながっているタイプです。このタイプにも振動子の設置方法によって幾つかに分けることが可能です。最も簡単な形状は振動子を溜まった液体中にそのまま入れるもので投げ込み型と言われます。水槽が限定されないので超音波洗浄装置を自由に持ち歩き、洗浄したいものが入った液体に振動子を入れるだけで使えます。

洗浄槽タイプは、ステンレスなどの金属でできた水槽に振動子を取り付けたものです。振動子から発生する超音波は水槽全体を振動させ、中に入っている液体全体に伝播します。この中の洗浄したいものを入れればきれいにすることが可能です。卓上型もこの方法と同じ原理で動いています。水槽の底面だけが振動子と接触している振動板タイプもあり、大きさに制限がある洗浄槽よりも大きな空間を確保できます。流水タイプと呼ばれるものは、流れる液体に振動子を当てて超音波が伝わっている状態にするものです。流れた液体は対象物に当たった時に気泡によるキャビテーション効果が期待できます。

超音波洗浄装置を使うメリット

いろいろとある洗浄機の中から超音波洗浄装置を選ぶ理由は、効率、コストや環境によるものや大きさに関係します。効率を考えると一度に複数の対象物を洗浄できるということが考えられます。水槽に入る範囲であればどれだけのものを入れても同じようにきれいにすることが可能です。場合によっては重ならないようにする工夫は必要になりますが、液体が触れている部分は、超音波が機能する範囲になります。

また洗浄とすすぎが一度にできる点も作業時間を短くする効果が期待できます。液体を清潔な水にすることで汚れを取り除き、そのまますすぎもできるので便利です。洗浄剤を必要とするような洗浄方法では、最後に何度もすすがないと洗剤が残ってしまう恐れがあります。これではきれいにした意味がありません。新たな残留物を残さないということはメリットと言えます。ただし、頑固な汚れを除去したい時は洗剤を利用して洗浄することも可能です。この場合でもきれいな水ですすぐことで比較的短い時間で残留物を除去することができます。

最も大きな特徴として非接触で狭い隙間や溝まで洗浄ができるという点が挙げられます。こすり洗いなどができない繊細なものでも、超音波洗浄装置の細かな気泡なら無理な力による影響を与えることなく汚れが除去できます。液体の中に含まれる微細な気泡が、狭いところでも問題なく入り込みキャビテーション効果を発生させることが可能です。液体の流れだけで汚れを取り除くよりもしっかりと汚れを剥がすことができるのが大きな違いと言えます。溝が多い歯車や装飾品などの洗浄にはよくに向いているクリーニング装置と言えます。

超音波洗浄装置で洗えるもの

湿式でいろいろな用途への利用が期待できる超音波洗浄装置ですが、洗えるものが限られます。素材で考えるとガラスや金属、陶器とセラミック、硬質プラスチックなど個体として硬い材質のものが向いています。ある程度硬いものでも木材などでできたものは超音波を吸収してしまうものは適していません。同じように超音波を吸収しやすい材質は洗浄できません。例えば革やベッコウが使われているものなどに超音波洗浄装置は使わない方が良いでしょう。超音波の周波数によって、与える影響が変わるので、素材によって選ぶ超音波洗浄装置を変えることも重要です。

また湿式であることが問題となるものも適していません。液体が入り込むことでトラブルが発生するようなものに超音波洗浄装置を使うことは避けた方がいいでしょう。その分防水がしっかりしているようなものであれば、問題なく利用することができます。金属のバンドを利用した防水時計なら問題なく利用することができます。また素材として水に濡れると使えなくなるようなものも避けた方がいいでしょう。金属などで酸化が心配なものであれば、乾燥の工程を追加することで利用できます。

構造上の制限として、内部に空洞があるようなものも注意が必要です。例えばガラス瓶など内部に空洞があって液体が入り込まなかったり、超音波が行き渡らない部分には洗浄効果が期待できません。内側と考えられるような部分は例え液体に浸かっていても効果は限定されます。表面に細かな溝があるようなものは、問題なく洗浄することができます。例えば歯車などの複雑なものややすりなどのざらざらしたようなものも利用可能です。

今まで効果で手が出なかった超音波洗浄装置も最近では小型化や低価格かが進み、個人でも購入しやすくなりました。ブラッシングができない小物やアクセサリ、コンタクトレンズなどのクリーニングに使うととても便利です。